空蝉日記帳

ひとりごと。

#3 夢日記

今日も一日の記憶がない。

 

というのも、それもそのはず。

今日は一日中眠っていた。

朝早く起きて、皮膚科に行って痛い思いをし、帰って来てから永遠に眠っていた。

目覚めたら夕方。昼寝の最長記録を更新した。記念すべき日だ。

ありえないほど眠った上に、夢の一つも覚えていない。本当に意識を失っただけの時間だった。

 

となると困ったことが一つある。

書くことがない。

昨日も同じことを言っていた気がするが、ない。本当にない。

今脳にあるのは「眠い」だけだ。あれだけ寝たのに。

 

せっかくだから、今まで見た夢の中で、覚えているものを書き出してみようと思う。

夢を日記に書き残すというのはあまり良くない行為だと聞いたことはあるが、まぁそれは気にしないでおこう。

 

まず。

今覚えている一番古い夢は、海の夢だ。

当時、僕はまだ未就学児だった。

そして堤防に立っていた。後ろはコンクリート、前、というか下には一面に広がる海。

一歩踏み出したら堤防から落ちて海にドボン。そんな場所に立っていた。

…という光景を、第三者の視点から見ていた。

その視点がどんどん、堤防の上の僕に近づいて行って、

そして、そこにいた小さな僕を突き落とした。

小さな僕はこちらを見たまま、顔をぽかんとさせて海へ落ちていく。

やがてざぱん、と大きな水音が鳴って、後は波の音とウミネコの鳴き声が永遠と続く。

そんな夢。

いっそ鮫に食われるだとか、鯨の背に乗るとか、そういう大袈裟なことが起きたって良かっただろうに。齢5歳の子どもが見る夢にしてはあまりにも現実的すぎないか。

それに、自分が誰に突き落とされたのか、落ちた後どうなったのか、そもそもあの視点は誰のものだったのか、疑問だらけ。

今思い出してみても不気味な夢だった。

 

次によく覚えているのは、火葬場の夢。

ほんの2、3年前に見た夢だったが、とにかく不可解な夢だった。

目が覚めたら、火葬場にいた。

火葬場に行った経験は恐らくないし、火葬場と聞いて、それがどんな場所なのか想像できないくらいには、僕は火葬場について詳しくない。

しかしその時は何故か確信した。あ、火葬場だ、と。

黒い煙が立ち上る横で、僕は黒いジャンパースカートを着て立っていた。

上を見上げれば、電線に止まった数十羽のカラス。灰色の空。

「不吉」の詰め合わせのような光景だった。

そこで何をするでもなく突っ立っていると、いつの間にか背後にショッピングモールが建っていた。

文字に起こすとまるで理解ができないが、夢の内容なのだから仕方がない。

そのモールに入ったかと思ったら、今度は気づいたら病院にいた。

名前を呼ばれて受付へ行くと、「もうすぐご両親がお迎えに来ます」との言葉をもらった。

そこで目が覚めた。これもこれで奇妙な夢だった。

ただ、一面が灰色と黒のみでできた世界は、少し美しかった気もする。影絵の世界のようだった。不吉なことに変わりはないが。

 

これが最後。これはつい最近見た夢。

僕は何かを調査する調査隊の一員だった。詳しいことはよく分かっていないが、とにかく何かに属している人間だった。

その日は、近くの村で怪死事件が起こっているから、その原因を突き止めろという任務を受けて、村へ来ていた。

その村で、名も知らない小学生の少年に懐かれた。

その少年は父親を例の怪死事件で亡くしているようで、それを解決しに来た僕らにとても興味を示していた。

やがて村の銭湯のような場所で、小さなアクリル箱を見つけた。

中には半透明の体を持った、何かの幼虫らしき芋虫がいた。これが怪死の原因だと、夢の中の僕は確信したらしかった。

原因を捕らえたので帰ろうと、僕以外のメンバーが帰り支度をしている間、例の少年が、僕の元へやって来た。

そして箱を見て、「何それ?」と指さす。

「お前の父親を殺した奴だよ」と返す僕に、少年はさらに「マジ⁉見せて!」と興味を示す。

夢の中の僕は、それを何故か少年に渡してしまった。

渡した瞬間、箱が勢いよく壊れ、芋虫が飛び出してきた。

それが少年の口から体内へ入っていき、少年が苦しみだす。

喚き、金切り声を上げて、白い何かを嘔吐し、また喚く。

その体がだんだん膨張し、ぐにゃぐにゃと膨らんで、身長200cmほどの、二頭身の赤ん坊の形になった。要は巨大な赤ん坊だ。顔は苦痛に歪んでいる、大きな赤ん坊。

しかも色は黒。黒い半透明。グミとか浮き輪とか、ああいうくらいの半透明。

その巨大な赤ん坊が、白い何かを嘔吐し続けながら、こちらを見てくる。

あぁ、僕のせいでこの子が死んでしまう。

そう思って、僕はその赤ん坊を精一杯抱きしめた。

そして白い嘔吐物の波に呑まれて、視界が真っ白になって、

そこで目が覚めた。

時間が経った今では、ただの不気味な夢だったと片付けられるが、見た当時は本当に何とも言えない気持ちだった。胸糞悪い、気持ち悪い、とにかくそういう感情だった。

短い映画やホラーゲームでも見ているような気分だった。これで一つ小説を書けそうだ。いっそ書くか。

それくらいには記憶に残っている。

 

もちろんこれ以外にも、まだまだ覚えているものはある。

顔の皮を全部剥がされ、ゾンビのような顔をした家族が、何の変哲もなく話しかけてくる夢だとか、

よくある、何かに追いかけられる夢だとか。他にもいろいろ。

 

人間の夢は基本的に、悪夢の方が多いらしい。それは知っているが、それはそれとして内容はどうにかならないものか。

稀に上のような、妙にストーリー性のある夢を見るから質が悪い。あの夢は無事最後まで見ることが出来たが、途中で目覚めて結末を見られなかった夢だって山ほどある。

所詮自分の夢とはいえ、続きが気になって仕方がない。

 

いつの間にか長くなった。

今日はどれかの夢の続きを見ることが出来るだろうか。

少しだけ期待して眠ろうと思う。